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2010年10月 アーカイブ

2010年10月04日

傳左衛門日記 10月3日

平成中村座・大阪公演初日。
毎回勘三郎丈の企画力実行力は絶大だが、今回は大阪城に劇場を建てられた。天守閣を借景に、回りは広い芝生の公園。我々が幾ら音を出しても全く迷惑はかからない。
さて、勘三郎丈が平成中村座を復活されて早10年が経つ。その時に、江戸時代に中村座座元の勘三郎家と囃子頭の傳左衛門家で執り行っていた「一番太鼓」の初日の儀式を復活した。
それまで「一番太鼓」の演奏方法自体は残っていたが、正確な儀式の遣り方や作法は唯一祖父の故11世傳左衛門が知るのみだった。
祖父から直に稽古を受けたのは数えの6歳6月6日位なもので、実技は全て母から習った。
祖父は脳溢血の後遺症で言葉が不自由だったが、幸い頭の中身は死ぬまでしっかりしていたので、立鼓になった高校生から祖父が死ぬ二十歳過ぎまで、聞きたい事、疑問に思った事を様々ぶつけては聞き齧った。その時偶々「一番太鼓」の儀式の遣り方や作法を聞いていた。
聞いていなければ完全に絶えてしまっていた。遣り方自体は単純な事だが、それを守る事も伝統である。今は僕の振舞いや打ち方を弟子達皆が見られるようになった。
斯くして伝統は続く。
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2010年10月07日

傳左衛門日記 10月7日

名古屋御園座。
「伝統芸能の今」の公演中に、亀治郎丈から大樋焼の盃をいただいた事は以前記した。
互いに陶器を愛好する共通点有り。以前からお世話になった方々に陶器を贈るのだが、亀治郎丈には最も愛好する細川護光氏の作品を贈りたいと考え、氏の作品を常設で購入出来る所を伺おうと、氏に直にメールをした。
残念ながら、左様な所は無いとのご返事、大いに落胆する。
が、氏から「作成しましょうか」と望外のメール、二つ返事でお願いし、世に二つしかない粉引の盃を作成していただいた。
一つは亀治郎丈に贈り、一つは旅の友、名古屋に持参している。
普段晩酌などしないのだが、毎日必ず一杯だけ呑み、磨き育てている。枕が代わると眠れぬ質だが、今月は実によく眠れる。
数十年後、互いの盃がどのように育っているか、亀治郎丈と細川氏と見せあいたいものである。
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2010年10月13日

傳左衛門日記 10月13日

名古屋御園座。
18歳から旅公演ばかり、ホテル暮らしは手慣れたものである。
御園座公演の常宿は名古屋観光ホテルである。部屋に季節の花、今は藤袴を活け、朝は茶を点て、音楽を聴く習慣、一昨日CD屋を巡っていたら、珠響仲間のギタリスト村治佳織さんの新作が出たとコーナーを設けて大きく宣伝、勿論それを購い、部屋に帰り早速聞いてみる。
朝聴く音楽と夜聴く音楽ははっきり大別される。今回のアルバムは朝、目覚めの茶を点てる時に合う感である。
珠響ツアーの時、先月ロンドンにレコーディングに行ってたと村治さんが話していた事を段々思い出した。
ロンドンは大好きで、34年の人生で20回は行っている。毎度ヒースロー空港に降り立った時の何とも言えない、独特の匂いを感じる度に旅の始まりを告げられたように心が躍る。
録音とは不思議なもので、音だけでなく、その場のシチュエーションや土地の空気感迄も共に封じ込める。今回の村治さんのアルバムには英国独特の薫りが音に封じ込められていて、開封した瞬間あの匂いを感じ、自分も旅に行ったような感。
充実した朝の目覚めである。
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2010年10月16日

傳左衛門日記 10月16日 

名古屋御園座。
今月は随分東京と往復している。近くて有難い。それにしても随分新幹線に乗っている。生涯では間違いなく山手線より新幹線の方が多い。飛行機のマイレージみたいに手軽に貯められないものか。
さて、過日取材で歌舞伎音楽の特色について尋ねられた。
歌舞伎のキーワードは「模倣」「らしさ」「本歌取り」の芸術である。
雅楽、神楽、猿楽、能楽、浄瑠璃…様々な前代の芸術から様々な要素を上手く取り入れている。
本屋でムック本を見つけ、名古屋のホテル暮らしの友となっているが、やはり世阿弥は深い。
能は五番立と言う五つの内容で大別され、五番を全て上演することが正式だそうだ。
歌舞伎も昔は一番狂言から大喜利と、朝から晩まで上演されていた。
尤も昔は能楽も歌舞伎も、もっとスピーディーだったそうなので、鑑賞するのに苦痛では無かっただろう。
11/25と26の日経ホールの広忠の公演は略式五番立という形式だそうだ。歌舞伎に例えれば「見取り」、つまりハイライトのガラみたいなものなのか。
愛好者にも入門用にも、それくらい見易い物の方が良かろう。
歌舞伎の演者や愛好者の中には、本歌を知らない方が良い、などと言う人もいるが、そんなのは無知者の僻みである。
本歌に触れてこそ、初めて離れる事が出来るし、そもそも表現力は自分の手持ちの引き出しの数で決まる。
三響會はそれを勉強する場である。
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2010年10月18日

掲載情報

雑誌・WEBへの掲載情報をお知らせいたします。

■亀井忠雄
「和樂」11月号(10月12日発売)
「和樂」創刊九周年記念六回連続企画として開催される「人間国宝塾」。
(亀井忠雄の回は12月18日)
開催に先駆け、インタビューが掲載されています。
人間国宝塾の詳細・応募方法もこちらに掲載されておりますので、
ぜひ書店にてお手にとってご覧ください。


■亀井広忠
日本経済新聞電子版「日経オフタイム」にインタビューが掲載されました。
http://www.nikkei.co.jp/category/offtime/eiga/column/article.aspx?id=MMGEzx001018102010

11月25日・26日に開催されます、「略式五番立 “神・男・女・狂・鬼”」について
みどころなどをお話しさせて頂きました。

2010年10月26日

雨の流山(傳次郎日記)

10月24日は千葉県流山市の利根運河にて薪歌舞伎がありました。ここでの演目は愛之助さん千之助さんの「連獅子」。千之助さんは“獅子物”初挑戦!半年前からのお稽古と気合い充分!
朝から雲が厚く怪しげな天候でしたが、朝8時の段階では夜20時以降が雨…正に天へ祈る思いと千之助さんの夢の連獅子を叶えさせる思いとで、出演者・スタッフ一同お天気に願いを込めていました!…が生憎の天気…開演20分前から雨が…もう中止か、というところで千之助さんが「やらせて下さい!僕はやりたいです!」と舞台裏のテントで出演者に訴え、その言葉に愛之助さんや、振付でいらした勘十郎さんも「お客様がいらっしゃる限りやろう!」とみんなに指示を出しました!
私たちはテントの中でマイクを置き演奏!外は雨!その雨にも負けない二人の踊りは一生残る光景でした!最後は拍手喝采の中で二人が仲良くお客様に応えている姿に感動!
10歳の千之助さんが大人たちの気持ちを動かし過酷な状況の中よく頑張ったと思いました!将来期待の役者さんです!
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傳左衛門日記 10月26日

名古屋御園座千穐楽。
昨日は東京~名古屋で舞台~大阪中村座。
朝一で大阪~名古屋に戻る。新幹線は便利だが、スケジュールが詰め込めるので却って身体には良くない。更に速いリニアが出来るらしいが、35年後との事、70の賀の祝、父のように元気に舞台に立てているだろうか。
今月の宿泊は名古屋観光ホテル、国内外あらゆるホテルに泊まったが、ここのフロントレベル程過不足無いスタッフはいない。朝掃除係に起こされたのには閉口したが、押し並べて流石名古屋随一のホテルと思わせる。
COP10の国際会議の影響か、街も活気を取り戻しつつある。今月の殺人的スケジュールで解ったが、東京にも大阪にも近いこの地は案外便利である。
終演後再び新幹線、帰京。
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2010年10月29日

「能楽現在形 劇場版@世田谷」のお知らせ

亀井広忠が「能楽現在形 劇場版@世田谷」に出演いたします。
お誘い合わせの上、ぜひお運びくださいませ。


能楽現在形 劇場版@世田谷 能「安達原」/半能「絵馬」

能楽の持つ可能性を拡げることを目的に、笛方・一噌幸弘、狂言師・野村萬斎、大鼓方・亀井広忠の三人が、能楽堂で06年にスタートさせ、今年8月に能楽堂での千秋楽を迎えた「能楽現在形」。その精神と姿勢を引き継ぎながら、舞台を世田谷パブリックシアターに移したのがこの「劇場版」です。
第四弾となる今回は、人間が内に秘める本性に迫る能『安達原』と、生命力に満ちた半能『絵馬』をおおくりします。
能のテキスト(謡曲)が持つ“演劇性”や“物語性”に焦点を絞った演出は、600年もの間継承されてきた能楽のまだ見ぬ魅力を引き出すことでしょう。ご期待ください。

[出演] 
12月17日(金)14時開演
能『安達原』 シテ:片山清司 ワキ:宝生欣哉 ワキツレ:大日方寛 アイ:野村萬斎  地頭:観世喜正ほか
半能『絵馬』 シテ:観世銕之丞 ツレ:坂口貴信 ツレ:梅若晋矢 地頭:片山清司ほか

12月18日(土)14時開演
能『安達原』 シテ:観世喜正 ワキ:森常好 ワキツレ:舘田善博 アイ:野村萬斎 地頭:観世銕之丞ほか
半能『絵馬』 シテ:梅若晋矢 ツレ:坂口貴信 ツレ:谷本健吾 地頭:観世喜正ほか

12月18日(土)18時開演
能『安達原』 シテ:観世銕之丞 ワキ:殿田謙吉 ワキツレ:御厨誠吾 アイ:野村萬斎 地頭:梅若晋矢ほか
半能『絵馬』 シテ:観世喜正 ツレ:坂口貴信 ツレ:谷本健吾 地頭:山崎正道ほか

『安達原』『絵馬』囃子方
笛:一噌隆之 小鼓:幸 正昭 大鼓:亀井広忠 太鼓:観世元伯

※能『安達原』 シテ:女/鬼女 ワキ:阿闍梨祐慶 ワキツレ:同行の山伏 アイ:能力
半能『絵馬』 シテ:天照大神(あまてらすおおみかみ) ツレ:天鈿女命(あめのうずめのみこと) ツレ:手力雄命(たぢからおのみこと)

[会場]世田谷パブリックシアター(東京・三軒茶屋)
[料金]
一般S席7,000円/A席5,000円/B席3,000円
高校生以下 一般料金の半額(世田谷パブリックシアターチケットセンターのみ取扱い、年齢確認できるものを要提示)
U24  一般料金の半額(世田谷パブリックシアターチケットセンターにて要事前登録、登録時年齢確認できるもの要提示、オンラインのみ取扱い、枚数限定)
[前売開始]2010年11月14日(日)
[チケット取扱]
世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515 http://setagaya-pt.jp
チケットぴあ 0570-02-9999(Pコード:407-088) http://pia.jp/t/
イープラス http://eplus.jp/
ローソンチケット 0570-000-407(オペレーター) 0570-084-003(Lコード:39022) http://l-tike.com/
[お問合せ]世田谷パブリックシアターチケットセンター 03-5432-1515 http://setagaya-pt.jp


2010年10月31日

今年は(傳次郎日記)

今年はなぜか“獅子物”が多い年です!
昨年末に太鼓の胴を購入したのですが、蒔絵が“唐獅子牡丹”…これがきっかけで今年は獅子の役ばかりなのか…
一月演舞場にて海老蔵さんの「鏡獅子」、三月南座にて獅童さん松也さんの「連獅子」、四月歌舞伎座にて勘三郎さん親子の「連獅子」、八月珠響にて亀治郎さんの「獅子」、九月大阪新歌舞伎座にて猿弥さん弘太郎さんの「連獅子」、九月日光東照宮にて亀治郎さん尾上右近さん、九月末に企画公演で海老蔵さん男寅さん、そして千葉流山市にて愛之助さん千之助さんの「連獅子」と…普通だと十年以上かかることを一年以内にさせて頂きました(笑)
今年は松也・男寅・千之助と初役の仔獅子たちも元気いっぱい頑張っていました!特に千之助君は五年生でも立派にお役をつとめ、早く本公演でも観たい!(…後ろでかな…)
今まで先輩方ばかりの舞台が多かったのですが、最近は同世代や後輩の舞台の方が多くなってきました。先輩方から学んだ教えや緊張感、同世代からは勢いや思い、後輩たちからは初心を学びます。舞台ってこの広い年齢層って重要ですよね…

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傳左衛門日記 10月30日

朝新幹線、新大阪に向かう。駅でばったり勘太郎丈に遇い、共に中村座へ。
来月の平成中村座は「法界坊」「夏祭」の二本立てである。
「夏祭」にはベルリン公演に引き続き、再び和太鼓の林英哲氏にお願いし、弟子の上田君をお預りさせていただいた。
今回は左程変更しないつもりだったが、今回は再びご当地の福島天満宮の地車講の方々がいらっしゃるので、彼らへのリスペクトもあり、なるべくだんじり囃子を避けるべく、繋ぎの音楽の編成を変え、上田君の和太鼓と門弟の傳十郎の笛だけとし、シンプルで小回りが利くようにした。
「夏祭」の音楽といえば派手なだんじり囃子、或いは江戸の祭り囃子、立ち回りの囃子に気をとられ勝ちであるが、中村屋型に限らず、江戸の型の「夏祭」の音楽で最も重要なのは、通称「泥場」と言われる舅義平次殺しの場面の、団七とのやり取りの静かな笛と大太鼓の"鎌倉"という囃子である。一見(一聴か)地味だが、遠景のような風情、凄惨な殺しの前の義平次と団七の心情を表現している。簡単に聞こえるが、俳優の心情、呼吸、台詞の音量、義太夫三味線、全てを理解出来ないと不可能である。
和太鼓と笛だけにした事により、音楽の流れがこの「泥場」に集中した。上田君と傳十郎はベルリン以来度々ジョイントライヴをやっている様で、呼吸もぴったりであった。
存外に稽古が早く終わり、最終の新幹線に間に合いそうだったので、博多に移動、泊。明日から熊本の八千代座で玉三郎丈の舞踊公演。
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