南座三響會。
京都は世界中で最も好きな都市だが、夏の蒸し暑さは尋常でない。夏は蒸し暑く冬は芯から底冷え。よく斯様な地に永い間都が有ったものだと改めて思う。
今回ご出演賜った富十郎丈は終戦の時南座にご出演で、四条の交番の前を通られた時に玉音放送を聞かれたとの事。京都の暑さってホントこんな感じでしたね~とサラリと仰る言葉にも歴史の重みを感じる。
今年は祖父11世傳左衛門の13回忌とあって、三響會も追善と銘を打ち開催した。
祖父が早くに倒れたので、初等科の頃から「傳左衛門」という、子供が書くには些か難しい名跡を継承するプレッシャーと闘ってきた。何といっても、現存する江戸の邦楽囃子の中では最も古い名跡である。
しかも他の邦楽囃子の御流儀のように舞踊や長唄の演奏だけをするのと違い、「歌舞伎」という"演劇"と密接に関わっている。芝居の筋、脚本、約束事、役者の型や癖、美術、音響、照明等、演劇の要素を全て把握しつつ演奏しなくてはならない。覚える事が多すぎる。
が、それが楽しい。直ぐにクリア出来る課題などつまらない。ある意味ゲーム感覚なのかもしれない。
追善は先祖を祀ることにより、自身の決意を新たにする場である。13世を襲名して未だ5年。色んな意味で長過ぎるこの名跡が完全に自分のものになるには少々時間がかかるかもしれない。
鞄、家具、時計、ジーンズ、茶碗、楽器はじめ諸道具…使い続けて手脂が染み込み、自分好みの味わいが出てくる。名跡はその最たるものである。
これからも無駄に古びた加工などせず、じっくり自分のものになっていく過程を楽しみたい。
