傳左衛門日記 3月28日
昨日は京都に着いてから、大好きな「とり市」の直営店で早春の薫り漂う筍御飯を食べた。「とり市」はカテゴリーとしては八百屋だ。春は筍、夏は京野菜、秋は松茸、冬は漬物と、四季折々の旬の物を楽しむ事が出来る。
出たての筍は未だ味の深みや歯ごたえは無いが、柔らかく口当たりが良い。早速両実家に送る。
その後、日頃懇意にしている京都古門前てっさい堂という道具屋の若主人を尋ねて行った。
知識と拘りの有るユニークな御仁で、いつも茶をご馳走になり、若主人の話を聞くのを楽しみにしているのだが、偶々お店の常連で陶芸家の細川護煕氏がお見えになっていて、大女将が食事に誘って下さった。予てからファンだったので、大変嬉しかった。
細川氏が首相でいらした当時は高等科か大学におり、未だ選挙権を持っていなかったので、政治は身近なものでは無く、正直余り覚えがない。
ファンになったのは近年、氏の作品群、就中黒茶碗を拝見してからである。
細川氏の器には独特の佇まいがある。一国の内府、宰相まで勤められ、我々民草では想像する事すら出来ない様々な清濁を御覧になられ、又併せ呑まれたのだろう。それ故に身心脱落された、てらいの無い、格の高い作品を作陶出来るのかもしれない。氏の作品を拝見していると不思議な空気に支配される。


