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2009年03月 アーカイブ

2009年03月31日

傳左衛門日記 3月27日

京都。非常に寒いし花見には早過ぎるが、早咲の桜はちらほら咲き始め、見事な風景である。
囃子と古美術は密接に関わっている。残念ながら現代では、舞台で使用するLEVELの道具を新規製作する事は不可能である。
無論現代にも素晴らしい職人は大勢いらっしゃる。ただ革や漆など、材料の質は明治維新以前と以後では比べものにならない相違がある上、経年"良"化を待つ時間も無い。
故に明治以前の質の良い物を探し求める。人からも古美術商からも。限られた道具を、さながら椅子取りGAMEの如く求め合うのである。
さて、茶道に必要な物が茶を飲む茶碗だけでないのと同じように、我々の道具も単に楽器のみではない。
特に鼓を収める箱と鞄は、楽器と同じ位大切な道具である。良質の箱でなければ良好な保存が出来ず、良質の鞄でなければ事故無く外に持ち出して劇場に運び、演奏する事が出来ない。
箱もなるべく古い漆塗りの蒔絵の物を探す。鼓の胴には蒔絵が施されている。桜の木で出来た胴に漆をコーティングする事で、日本の四季の寒暖や湿度による劣化や狂いが生じないようにする為である。
故に、古い良質な漆塗りの箱に収める事により、保存効果が倍増する。
僕が捜し物をお願いしている古美術商は京都にある一軒だけである。他の店に陳列されているのが気に入った時にはたまに浮気をする事も有るが…自ら依頼をするのは一軒だけである。
ご迷惑になるので屋号は伏せるが、高等科の頃より17年程お世話になっている素晴らしいご主人で、京都中の他の古美術商に日頃どちらで?と聞かれ名前を出すと、あちらの旦那と昵懇やったら他の店の鼓なんてあほらしやろ、と言われるような目利きの、齢70を越えてもまだまだ元気な、界隈の名物的な御仁である。
現在手元に鼓の箱が不足しており、江戸期の塗りの箱を捜していただくようお願いをしてあった。
4~5年待って、ようやく御主人の納得いく物が見つかったらしく、拝見に伺ったが驚いた。10年以上前にこちらで求めた鼓の箱と蒔絵の構図、仕立て、細工、全て同じ物であった。同じ下絵、同じ職人の作であるという意味だ。
製作年代は江戸中~後期。普段から桃山時代の鼓の胴を使用している僕にとっては、比較的新しい時代の物である。とはいえ、大量生産されるような品物では無い。
実に不思議な縁である。

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