西洋の音楽には沢山の擦絃楽器があり、独特な音圧を出す。対して我が国の擦絃楽器は胡弓のみである。
また笙、篳篥、能管、篠笛、尺八など竹の響きは多いが、金管楽器は無い。
アイーダといえば凱旋行進曲のトランペット。野田さんは当初から法螺貝等日本的な物で無く、トランペットを使用する方向で考えていた。歌舞伎座でファンファーレも面白かろうと直ぐに同意。テイストは過去の野田歌舞伎と同じく箏曲中心だが、音程が不安定な胡弓でなく、ヴァイオリンを使用する事にした。
編成は早々と決めていた。傳次郎氏にブッキングを頼み、三味線の今藤長龍郎氏、篠笛の福原友裕各氏とどの楽器がどのPARTを担当するか決定していく。ベルリン、南座三響會、LONDONと不在続きだったので、このご両人で殆ど編曲作業を進行して下さり、大変に有難かった。餅屋は餅屋。実際に演奏する皆で演奏出来るPARTを選択し、研究し練習するに限る。
が、芝居のなかでヴェルディからの移植曲が多いと、結局言葉の邪魔になる。オペラ曲は耳に付きやすく、野田さんの台本の言葉の面白さや深さと喧嘩してしまう。
そこで古典音階のオリジナル曲を各楽器で補曲していく。市川慎さんの濃姫のテーマの十七絃ソロ、長龍郎さんの偽祈祷師のテーマ、琵琶の桜井さんと尺八の松崎さんには、合戦のテーマや祈祷師のテーマで、武満徹氏宜しくBATTLEをしていただいた。歌舞伎にもよく合う。
録音を進行する上で一つ問題は、制作側の都合上、各楽器一名の音楽家しかお願いする事が出来なかった事。通常少ない人数で音の厚みを出すためには、先ずベースを録り、和音や不足分を繰り返し重録していくのがBESTだが、野田さんから、生っぽい感じでというご注文が入った。
つまり重ね録りの小細工は出来ない。いるだけの人数で各楽器一斉合奏一発録りという事になった。
