囃子の会当日。 朝10:30に歌舞伎座着到。観世能楽堂が能楽の殿堂とするならばここ歌舞伎座は歌舞伎の聖地。何度か舞台には立っておりますが、家族で主催の会は初めて。恐らく一囃子方の家族がこの歌舞伎座で会を主催するのは初めてであろう。感激以上に感慨深い気持ちが沸き立つ。尊敬して止まない成駒屋に紀尾井町、祖父傳左衛門らが戦ってきた戦場。
12:00頃より「静と知盛」の音合わせ(囃子チームのみの稽古)と舞台稽古。それから本日の演目の全ての場当たりを行う。 特に観世宗家の「楊貴妃」の場当たりは大変だった! 坂東玉三郎師直々に家元の為に照明・装束を選んで見て下さった。改めて家元と玉三郎師の舞台人同志の絆の深さを見た。共に能楽・歌舞伎を背負ってられる二人。
舞台稽古及び場当たりですっかり疲労が増す。本番一時間前にやっと終了。三響会で弟達から鍛えられているせいか、本番モードへの切り換えはだいぶ馴れたと思う。とは言え広忠の会・三響会・能楽現在形・広忠能楽囃子コンサートで得た経験をもってしても、やはり初番の幕開きは独自の緊張感がある。やはり雇われて打ちに行く身と主催して打つ身とでは重みが違う。とはいえ両親の主催だが三響会の全面サポート、家族全員の為の、そして母親の還暦の祝いの会だという自負もある。何よりも父と母とお二人には気持ち良く舞台を勤めて頂きたいという思いが3人にはある。祈るような気持ちで迎えた初番、藤間勘十郎氏の「三番叟」で幕を開ける。佐太郎頭取(皷のリーダー)の脇鼓に傳左衛門・傳次郎を従え自分の大鼓。三番叟はご存知野村萬斎・小生のコンビで数え切れぬ程売ってる自分にとってのライフワーク的な曲。これは小鼓三調がしっかりと支えてくれないとシテも大鼓もノリがつかない。流石にこの三人の母息子師弟トリオ、息も間もよく揃っている。気合い・音・間・掛け声、これだけ揃っている鼓はちょっと今の能楽界の小鼓にはいない。野村萬斎に見て
もらいたかった囃子の出来栄えだったと思う。藤前勘十郎氏、やはり彼も舞のサラブレッド、DNAがそうさせるのか、肉体の躍動感がこれまた他の舞踊家にはいない存在感。シビアに歌舞伎舞踊日本舞踊を見つめている視点は我々三兄弟と大いに通じている。鈴之段から三味線が入る歌舞伎舞踊形式。ともあれ初番はなんとか無事に終えることが出来た。
囃子の会、全ての演目に触れると膨大な文章になるので、取りあえずは自分の出演した演目のみに触れていきたい。次は中村富十郎師の「静と知盛」。普段三響会でやっている能楽と歌舞伎による船弁慶」とは違い、歌舞伎の船弁慶の短縮バージョンだったので、正直これが一番難易度が高かった。能楽に比べて遥かに曲の緩急が激しいので大変!! 自分にしては珍しく、1ヶ月以上前から毎日稽古を重ねた。出来は自分ではよく分からないので、傳左衛門傳次郎の判断に任せる。能楽では大鼓がリーダーシップを取る楽器だが、歌舞伎では小鼓、場面によっては太鼓が指揮を執る。なのでここは弟さん方に付いていくのに必死だった!!
次に中村吉右衛門師の「羅生門」。子供の頃からの憧れの播磨屋との初共演、嬉しかったし晴れがましかった! やはりかっこいい役者さんですね♪ こちらの羅生門も1ヶ月以上前から稽古を重ねてきた。今度は母親が太鼓。ずっとこの羅生門に関しては母親から「上品な羅生門にしましょう!」と釘を刺され続けてきたので、作為先行の舞台にはせず、あるがままの自然な舞台を心掛けたつもりではある。 ともあれこの2曲、また再挑戦させて頂きたいものである。やり甲斐があったし、苦しかったが楽しかった。考えてみればここまで能楽師大鼓方としては一番も打たせてもらってない! 全部三味線入りの囃子ばかり!? それこそ我が望む方向でもあります。いつかは勧進帳を打つのが夢の一つでもありますから。 また天王寺屋さん・播磨屋さんともご一緒出来たら嬉しいです。
最後に家族5人揃っての素囃子「獅子」。夢の共演って正にこれかも?! 何と親父様との共演はこれが初めてなのです。まさか同じ舞台で打つ機会を得るとは夢にも思わなかった! 同じ親子師弟でもこれだけ路線に距離があると果たして合うのかどうか??という懸念は昨日の5人揃っての稽古で吹き飛ばされました。やはり我々三兄弟の出所はこの両親からであり、稽古を舞台を通じて繋がっているんだなと改めて思う次第でした。 終わった後も皆淡々としておりましたが、傳次郎だけは感極まって涙を流しておりました。この会の成功の為、もしくはこの家族の為に一人気を吐いて奔走していたからでしょう。感謝の念は絶えません! し、改めて家族全員が同じ囃子を通じて繋がっていることの有り難さを思いました。本当に、親の有り難み、手前味噌ではありますが偉大さを思った一日でした。
そして、次は三兄弟だけで歌舞伎座で会が出来るようにならないと! と静かに燃えた日でもありました。

コメント (1)
「囃子の会」翌日の懇親会とも参会させていただきました。皆さんそれぞれの「囃子の会」当日についてのエントリを拝読し、あの日の濃密な一番一番を反芻することができ、さらに懇親会でのお話も思い出しました。
暑い暑い8月も乗り切られたご様子、これから秋、「珠響」、そして新年へとますますお忙しいかと存じます。ご自愛なされ、また私たちの記憶に残る素敵な舞台を見せてくださいね。
楽しみにしております♪
投稿者: coco | 2008年08月31日 18:48
日時: 2008年08月31日 18:48