6月中旬。LONDONから帰った二日後、素晴らしい音楽家達との録音作業は長く辛くも楽しい時間であった。特に能管の一噌幸弘さんはバッハ等クラシックもレパートリーとされているだけに、初見演奏にもかかわらず素晴らしい対応を見せて下さった。凱旋行進曲とアダージェットは氏の超絶技巧抜きでは語れない。弦楽器のみのアダージェットを竹管楽器が多い和楽器に翻訳するのは一抹の不安が有ったが、一噌氏と篠笛の福原友裕氏、尺八の松崎氏、箏の市川さん山野さんに三味線の長龍郎さん弥宏次さん、ヴァイオリンの鈴木さんがそれぞれ見事な演奏を聞かせて下さり、過去二作の野田歌舞伎のラストシーンにも共通する箏曲形式の「アダージェット」が完成した。
凱旋行進曲はトランペットの松原さんが若さを発揮して頑張ってくださり、五分超の大作に仕上がった。
又、琵琶の桜井さんは筑前琵琶と薩摩琵琶を使い分けつつ、武満徹氏のノヴェンバーステップスの琵琶奏者鶴田師の御門下に相応しく、随所に妖しい音色を入れて下さり、傳次郎もほぼ即興で、持ち前の作調能力をいかんなく発揮してくれた。
古典曲はいつも通りに、オペラ曲は原譜を忠実にしつつ歌舞伎下座や箏曲の速度に直し、二日間で膨大な音源を録った。使い方は野田さんの範疇である。正直切り貼りしていただきたくないが…それとて演出の範疇なので、全て自由にご使用下さい、とお伝えした。野田演出でどのように芝居の一部に活かされるのか、楽しみにしている。
