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広忠舞台日記 9月24日

女流能楽師の第一人者であり最高の実力を持つ、鵜澤久さんの会で、久さんの「江口・干之掛(カンノカカリ)」。大鼓の革を焙じる為に二時間半前に楽屋入りしたのですが、早くも女流能楽師チームが集合して手際良く動いて楽屋を作っている。久さんを中心としたガールズパワー。
さて江口。私は久さんに対して女流という見方は昔からしていない。下手な男よりも抜群に上手いからだ。銕仙会という強烈すぎる軍団の中でただひとり気を吐いて踏ん張ってこられた。その精神力と技術は並の男じゃあ太刀打ちできません。この日の久さんも燃えてらっしゃいました。孤高の光を放ってましたね!娘の光さんに喜多流の大島衣恵さんなど、久さんに追い付き追い越せと日々技術を上げられている才能にあふれた若手女流もいます。僕が久さんを尊敬できるのはやはり母親・佐太郎の影響が強いのでしょうね。男でも女でも上手い人は上手いし、やはり努力を積んでいる。芸はNO BORDERだと思います。
江口の曲そのものに関しては触れるとこれまたかなり長くなるのでまたの機会に。所要時間は2時間5分。野宮から采女、そして江口と大小序之舞3連続は肉体・精神ともにキツかった!!ですがこの序之舞こそが能役者にしか舞えない・囃せない能独自の表現方法。そして能役者の人生に合わせた曲目が豊富なのもこの序之舞物。毎回違う発見があります。
笛は昨日と同じく松田弘之氏。松田さんの序之舞は「哀愁」という言葉がぴったりの、役者の生き様や覚悟が非常によく出てる私が大好きな笛方のお一人です。常に命を削り乍ら舞台を演っている松田さんの姿勢は失礼乍ら自分と似た所有り、とても共感出来、尊敬する役者のお一人です。
我々役者は外に向かっての発散と同じベクトルでもって肉体の内側に向けて力の負担をかけていく呼吸法や発声、体の動きといったものを持っていなければなりません。体の中に内在する強い力、それを「イキの強さ」と呼んでいます。静かな序之舞を演る時ほど、そのイキの強さが無ければ何の意味もなさない、無感動のまま終わってしまうゆったりとしただけの演奏になってしまう。そして序之舞は笛が大変に重要な役割を担います。藤田大五郎先生を頂点に、イキの強い序之舞を吹かれる方々、「華麗」の一噌幸弘、「重厚」の藤田六郎兵衛、「妖艶」の杉市和、「哀愁」の松田弘之諸氏との舞物は常に緊張感を保ちながら、厳しく、楽しくお相手させて頂いております。

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